第15回の歌人は吉岡太朗さんです。
歌の主題からは遠く離れて
ひとつひとつの風景を、より小さな画角に切り取ることで
手触り感や色や空気を届けようとする、そういう三首に思われました。
どうぞお読みください。
「無題」 吉岡太朗
クリックに音あることの快楽にニュースサイトを見てまわりたり
ポンカンをひくい位置より渡されてあなたと同じこたつに入る
堤防のS字の坂にさしかかりひとが自転車をおりるつかのま
プロフィール 吉岡太朗
1986年8月27日生。京都市伏見区の水のある場所在住。第50回短歌研究新人賞受賞。
感想です。
まず二首目。「ポンカンをひくい位置より」これが効きました。なるほどね、と首肯の一首。
一首目。URLをクリックしたときに微妙な間をとりシステムの発する音が気持ちよくてニュースサイトを見てまわった、という意味のように思われます。フィードバックはユーザーに不安を与えないためのヒューマンマシンインターフェイスであり、音を鳴らすのは例えばクリックする第一接面からハイパーリンクのコネクションを張りにいく第二接面に到達したことをマルチモーダルインタラクションによってユーザーにノーティファイするような感性インターフェイスデザインです。つまりはマウスボタンを押すとパソコンが「かひこまりまひた~」と言ってユーザーも一安心するわけです。
三首目。堤防の法面に取り付けられる坂路の方向は、水位が上昇したとき天端の洗掘を避けるように工夫されているらしい。自転車の走る方向によってはいったん向きを逆にかえなくてはいけない場合もあるだろう。そんなつかのまをとらえているのではないかと思いました。
投稿情報: (た) | 2009年4 月24日 (金) 18:23