夏も本格的になってまいりましたが、いかがおすごしでしょうか。
第8回の a crossing は内山晶太さんの短歌作品です。
床下や窓の桟などにこっそり住み着いている、和の昆虫の一生が目に浮かびます。
短歌三首 * 内山晶太
わらじむし湯船の底にゆらめけりさながら冬のはじまりにして
You Tubeというものあればあるときは若かりし轟二郎みており
竜田揚げ食みつつうすき嘔吐感 、くりかえし花吹雪のなかにいるよう
*
内山晶太(うちやましょうた) 1977年、千葉県八千代市に生まれる。1998年、
一首目の感想を追記。「さながら」とあるので季節は冬以外。わらじむしが死骸であるとすると、夏の湯船の底に冬のはじまりのようなわらじむしがゆらめいていた、ということになり、寒暑が対比される。それを見て涼んでいるほどに暑いのかも知れない。
三首目。竜田揚げは何の竜田揚げなのかは書かれていない。千葉の内山姓ということから、仮に青身魚の竜田揚げとしてみる。食べてゆくとだんだん油酔いしてくる。しかしその美味しさは食べるごとにくりかえし花吹雪のなかにいるようだ。青身魚は食べ始めは独特のにおいがあるが、食べ進むほどに旨みのなかに入っていく。鶏や鯨の可能性もあるので何の竜田揚げか断定すれば邪道なのかも知れない。ただ竜田揚げは青身魚とは限らないが、青身魚の竜田揚げはあるので、その感覚から入ってみた。
三首見渡すと、卑近な、時にユーモラスな対象に着眼していながら、注がれる表情はシリアスであるように感じた。
投稿情報: (た) | 2009年3 月23日 (月) 16:18
第一首。八千代市は団地発祥の地であり、わらじむしはポピュラー。ダンゴムシも多く、それはつやがあって硬いし丸まるからキャラが立っているが、わらじむしはマットだし柔らかくて丸まらない。玄人好みの虫か。湯船の底にゆらめいていたのならば、屍と思われる。
第二首。轟二郎をチョイスしてもらえたから、微妙な感じが伝わってくる。想起されるのは+a crossing 第7回の“ルビ”。「You Tube」にはどうルビをふろう。
投稿情報: (た) | 2008年10 月28日 (火) 17:46