第9回の a crossingは、大辻隆弘さんの短歌作品です。
どうぞご覧ください。
短歌三首 * 大辻隆弘
鳥のこゑ西にながれて夕ぞらはしだいに青のさめゆく平(たいら)
しみじみと受け持つ生徒に説教を垂れをり夢に涙してわれは
わななきてなだりの草にさす陽ざし或いは朝をひびかふ木霊
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大辻さんは、この8月25日に三冊目の散文集
『時の基底 短歌時評98-07』を六花書林から出版されました。
http://rikkasyorin.com/
平成10年代の時評を中心とした評論集です。
わたしが短歌にはじめて触れた時期とほぼ重なり
とても興味のあるところなので、読んでみたいと思っています。
大辻さんの短歌評は、歌人の光森裕樹さんを予定しています。
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大辻隆弘(おおつじ・たかひ ろ) 1960年三重県松坂市生まれ 現代歌人協会会員 日本文芸家協会会員 著書に、歌集『水廊』 『デプス』(第8回寺山修司短歌賞) 『抱擁 韻』(第24回現代歌人集会賞) 『夏空彦』 評伝『岡井隆と初期未来ー若き歌人たちの肖像』など。
第一首。伊勢に行った時、山の展望台から鳥羽を背に大和高原のほうを眺めると、夕日が落ちかかっていた。西に向かう飛行機雲が見えたので、写真に撮った。ところがその写真は色合いがどうもうまく再現されない。「しだいに青のさめゆく平(たいら)」は、写真よりも鮮やかに、移り変わる透き通った空の色と玄に澱んだ平の色の記憶を私の中に再現させた。
投稿情報: (た) | 2008年10 月28日 (火) 18:41